tower(KITCHEN)
明倫店

旧明倫小学校教室跡 京都芸術センター内1F

tower(KITCHEN)Projectとは

京都芸術センター内にあるカフェ「前田珈琲 明倫店」が、20周年を記念して、店内のキッチンを「tower(KITCHEN)」という彫刻作品に作りかえよう。というプロジェクトです。

しかし、ただ店内に彫刻が出現するだけではありません。

明倫店は、もともと小学校だった建物の中にあります。地域の人々にとって特別に愛着のある場所で、前田珈琲は20年もお店をつづけさせていただいています。一方で、京都芸術センターを訪れる多くのアーティストの方にも贔屓にしていただき、いろいろなことを教わってきました。

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tower(KITCHEN)プロジェクトメンバー(撮影:鈴木秀法)

この先は、その両者をもっと繋げ、両者に何か恩返しができるようなお店にしていきたい。

京都には、数々の美術館博物館や芸術大学はあっても、アーティストと地元の人が屈託なく交流できる場所は少ないと聞きます。

アーティストと地元の方々、地元の子どもたちの接点をつくれる場所。喫茶店としてだけではなく、アーティストの発表の場やさまざまなワークショップ、プログラムの運営など(towerの穴を使ったワークショップもできるかも?)、明倫店だからこそできるお店作りに挑戦したい。

tower(KITCHEN)という巨大な彫刻作品を、その “よすが” にしていくことが、前田珈琲としての使命だと感じています。

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金氏徹平《tower》シリーズとは?

もとは、京都出身の現代美術家・金氏徹平さんの小さなドローイングから始まった作品シリーズです。

箱状のものにたくさんの穴があいていて、そこからどろっとしたものやグニャグニャしたもの、球体や煙など、いろんな得体の知れないものが出たり入ったりしている様子を描いたものでした。それがコラージュ作品に、次いでアニメーション作品に……と形が発展していきます。

さらに2017年の「KYOTO EXPERIMENT」では、これが舞台化。それまでは、ただの妄想上のタワーだったものが、舞台上に実際に「建築」として表現するために、建築家(dot architects)・家成俊勝と協業することになりました。

演劇としてのtowerは、2018年の「六本木アートナイト」でもメイン作品として上演されています。
tower第一形態がドローイングだとすると、第二形態がコラージュ、第三形態アニメーション、第四形態が演劇。そして今回は第五形態で、お店。

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tower (THEATER)/ロームシアター京都(撮影:守屋友樹)

tower(KITCHEN)をよすがに、
アーティストと地域の接点を

明倫店のある京都芸術センターは、かつて明倫小学校だった建物を改装して運営されています。

明倫小学校は、明治2年からつづく由緒ある小学校で、地域のシンボルとして、非常に大切にされてきました。しかし京都市のど真ん中に位置する地域だけに、少子化やドーナツ化現象の煽りを受けて、平成5年に閉校。芸術センターがオープンしたのはその7年後、平成12年のことです。

その後、芸術センターは京都だけでなく世界からアーティストが集う場所となり、前田珈琲明倫店も、多くの方と交流を深めてきました。

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京都芸術センターは、有形文化財にも指定される歴史ある建物。教室の一つを改装して、前田珈琲明倫店がオープンした (撮影:鈴木秀法)

ただ、平成の終わりごろから、明倫学区には大きなファミリーマンションが建ち並ぶようになり、再び人口も、子どもも増えているという揺り戻しの現象が起きています。それに伴い、子どもたちの遊び場がない、地縁のない若い夫婦が集える場所が少ない……といった課題もあるようです。

他方、「場所がない」という声は、アーティストからも耳にします。京都には8つの芸術系大学がありますが、卒業生同士・教員同士ではともかく、学生レベルではほとんど交流がありません。キャンパスや展覧会以外にも、日常的な接点となる場所が京都市内にもっとあったらいいのに……というのは、今回のプロジェクトメンバーの常からの願いでもありました。

アーティストと、地域の方々と。
そして、京都に幾多ある学校の学生同士と。

双方がこの店で、tower(KITCHEN)を前に、居心地の良さと刺激の両方を感じる。そしてこれをよすがに、ワークショップやプログラムの開催など、双方が繋がるような場づくりができたら……。

それが、長年この地域でお店をやらせていただいている前田珈琲の、これからの役目なのではないかと考えています。

(このテキストは、本プロジェクトのクラウドファンディングを行った際の座談会から再構成しています。)

tower(KITCHEN)Projectメンバー

金氏 徹平(美術家・彫刻家)
1978年生まれ、京都在住。京都市立芸術大学美術学部彫刻科准教授。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了。身のまわりの事物を素材に部分を切り抜き繋ぎ合わせることで、既存の文脈を読み替えるコラージュ的手法を用いて作品を制作。横浜美術館(2009年)、ユーレンス現代美術センター(北京 2013年)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(2016年)等で個展を開催、また、国内外 の企画展・国際展で作品を発表している。2011年以降、舞台美術も複数手がけ、近年は舞台作品も 制作している。
家成 俊勝(建築家・株式会社ドットアーキテクツ 代表)
1974年兵庫県生まれ。アート、オルタナティブメディア、建築、地域研究、NPOなどが集まるコーポ北加賀屋を拠点に活動。代表作はUmaki Camp(2013、小豆島)、千鳥文化(2017、大阪)など。第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(2016)にて審査員特別表彰を受賞(日本館出展作家)。
前田 剛(有限会社前田珈琲 代表取締役)
1972年5月29日、京都生まれ。大阪工業大学工学部卒業後、家業の前田珈琲を手伝い始める。2000年4月に京都芸術センターに明倫店を開店。2004年に法人化、現在京都市内文化施設や観光地などに9店舗を展開。中国北京へも進出。好きな言葉は「行き当たりばったり」、座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。
金島隆弘(アートプロデューサー・芸術学研究員)
1977年東京生まれ、京都在住。アートフェア東京やアート北京のアートディレクターなどを経て、現在は京都市立芸術大学大学院美術研究科芸術学博士(後期)課程に在籍。現代美術や工芸の展覧会企画、交流事業のコーディネーション、アーティストの制作支援、東アジアの現代美術の調査研究などを手がける。
北原 和規(グラフィックデザイナー・UMMM 代表)
2012年京都にてUMMM設立。様々な美術を中心に宣伝美術・企画・空間などを担う。近年の主な仕事として、KYOTOGRAPHIE(2019〜)、THEATRE E9 KYOTOのグラフィック。芸術計画 超京都 所属。非常勤講師。
宮地 敬子(デザイナー・株式会社ドットアーキテクツ)
京都造形芸術大学空間演出デザイン学科卒。2016年よりdot architects参画。最近の主な担当としてGEORGES gallery(小豆島)、ARTISTS' FAIR KYOTOなどがある。前田珈琲 tower(KITCHEN)プロジェクトでは設計、現場管理担当。
廣安 ゆきみ(READYFOR キュレーター)
READYFOR アート部門 リードキュレーター。出版社勤務を経て、現職に。2018年 アート部門を立ち上げ、現在は主に芸術・文化に関わるクラウドファンディングプロジェクトを担当している。

tower(KITCHEN)制作メンバー

  • 音響ディレクション: 荒木 優光
  • 照明ディレクション: 高田 政義
  • エプロンデザイン: 金氏 徹平+藤谷 香子
  • 映像ディレクション: 山田 晋平
  • メカニック: 小林 椋
営業時間 / 定休日
10:00〜21:30 / 祇園祭(7/14.15.16)、年末年始(12/28~1/4) / 喫煙不可(テラスは喫煙可)
電話番号
075-221-2224
住所
〒604-8156 京都市中京区室町通蛸薬師下ル山伏山町546-2 京都芸術センター内1F
アクセス
阪急京都線「烏丸」駅、地下鉄烏丸線「四条」駅より徒歩5分

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